親が認知症になったら、実家は売れるのか。動く前に確かめる4つ
書いた人:川原貴諒(宅地建物取引士・大阪市西成区)親の物忘れが、増えてきた。
まだ診断は出ていない。
でも、話がかみ合わない日がある。
施設に入って、実家は空いたまま。
「もう売ったほうがいい」と、きょうだいで話が出る。
でも、名義は親です。
親が契約の中身を分からないまま、売れるのか。
子が代わりに動いて、いいのか。
診断が出ていなくても、売る前に確かめることがあります。
動く前に、4つ確かめてください。
親に、契約する判断の力があるか → 診断の名前だけでは決まりません
委任状で、子が代わりに売れるか → 委任状があっても安心とは言えません
後見を使うと、どうなるか → 後見人は家庭裁判所が選びます
住んでいない実家でも、許可が要るか → 施設に入って空いた家でも、許可が要ることがあります
内容は2026年11月時点です。
大阪市西成区の不動産会社TKグランクスの川原がまとめます。
目次
確かめる1:親に、契約する判断の力があるか
確かめる2:委任状で、子が代わりに売れるか
確かめる3:後見を使うと、どうなるか
確かめる4:住んでいない実家でも、許可が要るか
それでも売るときの順番
親が元気なうちに、できること
誰が確かめて、誰が判断するか
1. 確かめる1:親に、契約する判断の力があるか
家を売るのは、契約です。
契約するときに、本人に判断する力(意思能力)が無ければ、その契約は無効になる、と民法に書いてあります。
売買が無効になる可能性がある、ということです。
ただし、「認知症と診断されたら売れない」とは言えません。
診断の名前と、契約する判断の力は、同じものではありません。
その時、その契約について、判断する力があったかどうか。
それは一件ずつ見られます。
だから、売買の場では、親本人の意思を確かめるのが普通です。
決済(代金を払って引き渡す日)の場で、売主本人の意思を確かめられないと、手続きが止まることがあります。
2. 確かめる2:委任状で、子が代わりに売れるか
「委任状を書いてもらえば、子が売れる」と聞くことがあります。
子が親の代わりに売るには、親本人から代わりを頼まれていることが前提です。
頼むのも、親の意思です。
親に判断する力が無くなってから書いた委任状では、その頼み自体が成り立たない可能性があります。
逆に、「委任状では絶対に売れない」とも言えません。
いつ、どんな状態で頼んだか。
それによって変わります。
委任状があるから安心、とはなりません。
3. 確かめる3:後見を使うと、どうなるか
後見は、判断する力が欠けてしまった人に代わって、財産と契約を見る人を、家庭裁判所が付ける仕組みです。
親の判断する力が欠けてしまったら、家庭裁判所に申し立てる道があります。子は申し立てられます。
後見などを始めるかどうかは、医師の診断書や鑑定(医師が判断する力を詳しく調べること)などをもとに、家庭裁判所が判断します。
後見が始まると、後見人が、親の財産を管理し、親に代わって契約をします。
親の家を売る話も、後見人が親に代わって進めることになります。
後見が始まったあとに親本人がした契約は、取り消せるものになります(日用品の買い物など、日常生活のことは除きます)。
そのうえで、知っておいてほしいことがあります。
後見人は、家庭裁判所が選びます。
家族を候補に書いても、選ばれるとは限りません。
弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が選ばれることもあります。
誰を後見人にするかの家庭裁判所の判断には、不服を申し立てられません。
一度申し立てると、裁判所の許可が無ければ取り下げられません。
今の制度では、使い始めたら、本人の判断する力が戻ったと認められない限り、途中でやめられません。
今の制度では、売却が済んでも、後見は続きます。
2026年6月、成年後見の制度を見直す法律が成立しました。
後見と保佐をなくして、補助という仕組みにまとめる内容です。
ただ、この部分が始まるのは公布から2年6か月以内の、政令で決める日で、まだ決まっていません。
それまでは今の制度で手続きをします。
改正後も、親に代わって売る人(補助人)が住まいの家を売るときは、家庭裁判所の許可が要ります。
いま始めた後見が改正後どう扱われるかは、家庭裁判所や司法書士・弁護士に確かめてください。
4. 確かめる4:住んでいない実家でも、許可が要るか
後見人が付けば、すぐ売れる。
そうとは限りません。
親が住んでいた家を後見人が売るには、家庭裁判所の許可が要ります。
売るほか、貸す、賃貸借をやめる、抵当権(お金を借りるときの担保)を付けるなど、これらも対象です。
ここで間違えやすいのが、施設に入って空いている実家です。
裁判所の案内には、こう書いてあります。
「本人が現在は病院や施設に入所しているため居住していないが、将来居住する可能性がある場合、又は入所前に居住していた場合なども含みます。」
親が施設にいて、今は誰も住んでいない。
それでも「住まい」として扱われることがあります。
「空き家だから許可は要らない」とは、なりません。
許可を得ずに売った場合、その売却は無効になる、と裁判所の案内にあります。
5. それでも売るときの順番
それでも売る必要があるときは、この順番です。
家庭裁判所に後見を申し立てる
家庭裁判所が後見人を決める
後見人が、買う人と値段の見通しをつける
取引が成立する一歩前に、家庭裁判所へ許可を申し立てる
家庭裁判所の許可が出る
売買契約と引渡し(契約の結び方は、司法書士・弁護士と確かめる)
4の申立てには、売買契約書(案)の写しと、不動産会社が作った査定書(鑑定書に準じた、詳しい中身のもの)を付けます。
査定より安く売るなら、なぜその値段になったかの説明書も付けます。
審理には期間がかかります。
その間、買う人にも待ってもらうことになります。
引渡しの日は、余裕を持って決めてください。
(大阪家庭裁判所の案内から。費用と期間も、こちらで確かめてください)
https://www.courts.go.jp/osaka/saiban/seinenkouken/index.html
6. 親が元気なうちに、できること
親に判断する力があるうちなら、別の道もあります。
一つは「任意後見」です。
判断する力があるうちに、将来の代理人を親が自分で決めておく契約です。
契約は公正証書(公証役場で作る書面)でします。
効力が出るのは、判断する力が衰えて、家庭裁判所が任意後見監督人(任意後見人の仕事を見張る人)を選んでからです。
任意後見:https://www.courts.go.jp/osaka/saiban/ninnikouken/index.html
もう一つは、「家族信託」と呼ばれるものです。
親が元気なうちに、信頼できる家族へ、財産の管理や処分を託しておく契約です(法律の言葉では「信託」)。
不動産を託すときは、名義を移すのと一緒に「信託の登記」(託したことを登記簿に載せる手続き)をします。
もう元気なうちとは言えないかも、と迷う段階なら、まず司法書士・弁護士に、今の状態で何が選べるかを聞いてください。
どちらが合うかは、家ごとの事情で変わります。
相談先は、司法書士・弁護士です。
7. 誰が確かめて、誰が判断するか
親に判断する力があるか。
後見などを始めるかどうかは、医師の診断書や鑑定などをもとに、家庭裁判所が判断します。
売ってよいか。
その許可も、家庭裁判所です。
不動産会社が決めることは、どれもありません。
動くときは、この順番です。
①親の今の状態を確かめる(かかりつけ医、通院の記録)
②後見・任意後見・信託の手続きは、司法書士・弁護士に聞く
③売る段取り(相場、買う人探し)は、不動産会社に聞く
僕も、後見人が付いた家を売ったことがあります。
うちでは、決済の日ではなく、売却のご依頼を受ける前に、親御さん本人の意思を確かめています。
相続と税金の入口はこちら:父が施設にいる実家は、誰が売るのか
https://tk-granks.co.jp/service/inspection/nishinari-chichi-shisetsu-jikka-uru
親の名義の家を、子が売る。
気持ちの上では、自然な話です。
ただ、親の判断する力、委任状、後見、許可。
順番を間違えると、売ったはずの家が、売れていないことになります。
売る話の前に、段取りを知る。
売る段取り(相場、買う人探し)の相談を受けます。親御さんに判断する力があるか、後見が要るか、許可が出るかの判断はしていません(判断するのは家庭裁判所。手続きは司法書士・弁護士へ)。相談は無料です。LINEには「親の今の状態、家の名義、家のある市区町村」まで書いてもらえれば足ります。返事をするのは宅地建物取引士の川原本人です。https://lin.ee/8wVUuCW
大阪市西成区の不動産屋 TKグランクス株式会社 川原貴諒(宅地建物取引士)
宅地建物取引業 大阪府知事(01)第067136号
出典:民法3条の2・7条・9条・99条・111条・113条・653条・843条・859条・859条の3(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 /家事事件手続法119条・121条 https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052 /任意後見契約に関する法律2条・3条・4条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000150 /信託法3条・14条 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 /不動産登記法98条 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 /裁判所「居住用不動産処分許可」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_25_04/index.html /大阪家庭裁判所 成年後見 https://www.courts.go.jp/osaka/saiban/seinenkouken/index.html ・任意後見 https://www.courts.go.jp/osaka/saiban/ninnikouken/index.html /厚生労働省 成年後見はやわかり https://guardianship.mhlw.go.jp/?p=1034 /法務省 成年後見制度Q&A(Q25) https://www.moj.go.jp/MINJI/a04.html /法務省 成年後見制度の見直し(令和8年法律第45号) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html /参議院 議案情報 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221080221043.htm
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