ホーム・インスペクション・

ホームインスペクションは、売主も買主も守る——「免責特約があ...

    ホームインスペクションは、売主も買主も守る——「免責特約があるから安心」の落とし穴

    書いた人:川原貴諒(宅地建物取引士・大阪市西成区)

      ホームインスペクションは、買主のためだけでなく、売主を守る手段にもなります。大阪市西成区の不動産会社TKグランクスが、中古住宅を売る方・買う方向けに、免責特約だけに頼らない取引の進め方を説明します。契約時点の建物の状態が第三者の記録として残るので、売主は診断結果に基づいて告知書を書け、買主は弱点を知ったうえで買うかを決められます。

      中古住宅の売買で、こんな特約をよく見かけます。

      「売主は契約不適合責任を負わないものとする」

      いわゆる免責特約です。売主にとっては「引き渡した後のことは責任を問われない」という安心材料に見えます。買主にとっては「何かあっても文句を言えない」という不安材料に見えます。

      しかし実務の現場から言うと、この特約は売主にとっても万能ではなく、買主にとっても絶望ではありません。そして、双方の不安を根本から減らす道具が、ホームインスペクション(住宅診断)です。

      免責特約は「万能」ではない

      免責特約があっても、売主が責任を免れない場合があります。売主が知りながら告げなかった事実については、免責の効力が及びません(民法572条)。

      ここで重要なのは、争いになったとき「本当に知らなかったのか」が問われるという点です。長年住んでいた家の雨漏りやシロアリについて、「気づかないはずがない」と判断されれば、売主の「知らなかった」は通らない可能性があります。過去の修繕の痕跡や近隣とのやり取りが、その材料になります。

      つまり売主は「知らなかったこと」まで疑われるリスクを抱え、買主は免責特約の存在で泣き寝入りのリスクを抱える。双方が、見えないものに怯えながら契約しているのが実情です。

      ホームインスペクションとは

      ホームインスペクション(住宅診断)とは、建物の専門家が第三者の立場で住宅の状態を調査し、劣化や不具合の有無を報告するものです。国の制度としては「既存住宅状況調査」という枠組みがあり、宅建業法でも、媒介契約の書面に、建物状況調査を行う者のあっせんに関する事項を書くことが義務付けられています。それだけ、国も普及を後押ししている仕組みです。

      調査するのは、構造の安全性に関わる部分(基礎・柱・梁など)と、雨水の浸入に関わる部分(屋根・外壁・開口部など)が中心です。

      売主を守る、という視点

      インスペクションは「買主が欠陥を見つけるためのもの」と思われがちですが、実は売主にこそメリットがあります。

      契約時点の建物の状態が、第三者の記録として残るからです。

      引き渡し後に不具合が見つかったとき、「契約時にはこの状態だった」という客観的な証拠があれば、「隠していたのではないか」という疑いから売主を守れます。告知書(物件状況報告書)も、診断結果に基づいて書けるため精度が上がり、免責特約の足場そのものが固まります。

      売出し前にインスペクションを済ませておけば、買主に対して「診断済みの物件です」と示すことができ、売却活動でも他物件との差別化になります。

      買主を守る、という視点

      買主にとっての価値はシンプルです。弱点を知った上で判断できることです。

      弱点のない中古住宅は存在しません。問題は弱点があることではなく、知らずに買うことです。診断結果を見て、「この程度の劣化なら許容できる」「この修繕費用を見込んで価格交渉する」——そうした判断材料が手に入ります。

      引き渡し後の「聞いてなかった」は、こうして消えます。

      費用とタイミング

      費用は調査範囲によりますが、基本的な調査でおおむね5〜7万円前後、詳細な調査やオプションを含めると10万円を超える場合もあります。

      数千万円の取引で起こる「言った・言わない」の争いと、その解決にかかる時間・費用・精神的負担を考えれば、保険として十分に釣り合う金額だと考えています。

      タイミングは次の通りです。

      • 売主側:売出し前。告知書の精度が上がり、販売活動の武器になります

      • 買主側:購入の申込みから契約までの間。診断結果を踏まえて最終判断ができます

      なお、居住中の物件では売主の協力が必要です。だからこそ、仲介者が間に立って段取りする意味があります。

      仲介の仕事は、診断結果を「契約に落とす」こと

      診断して終わり、では半分です。

      見つかった事実は、契約書の容認事項や告知書に反映して初めて意味を持ちます。「この不具合を双方が了解した上での取引である」と紙に残すことで、売主の免責は実効性を持ち、買主の納得は記録になります。

      隠すための免責から、開示した上での納得へ。ホームインスペクションは、売主も買主も守ります。

      今後の中古住宅の売買では、当たり前になっていくと考えています。その「当たり前」を先にやるのが、プロの仕事です。

      よくあるご質問

      Q. 診断で不具合が見つかったら、売れなくなりませんか?
      逆です。不具合を把握した上で価格や条件に織り込んだ取引は、後から崩れません。知らないまま売って引き渡し後に発覚する方が、売主のダメージは大きくなります。

      Q. 費用は売主と買主、どちらが払うのですか?
      依頼した側が負担するのが原則です。売主が売出し前に行う場合は売主負担、買主が契約前に行う場合は買主負担が一般的です。

      Q. 診断済みなら、告知書は不要になりますか?
      なりません。診断は建物の状態の記録、告知書は売主の認識の記録で、役割が違います。両方揃って初めて取引の土台になります。


      TKグランクス株式会社
      宅地建物取引業免許 大阪府知事(01)第067136号
      代表 川原 貴諒(宅地建物取引士)

      → 家の売却・買取のご相談について(対応エリア・流れ・費用)

      LINEは、この記事の題と「売るか迷っている」の一言で大丈夫です。

      chat

      LINEで相談する(無料)

      コラム一覧へ戻る